2025年の夏、日本とアメリカの間で大きな関税交渉が行われました。日本側はさまざまな譲歩案を出すことで関税を25%から15%まで引き下げることに成功!

その譲歩の中に、「ボーイング社の航空機100機を購入する」というものがありました。

飛行機を100機も押し売りされた。どうやって使うんだよ!と不安を感じている方もいるかと思いますが、実はそれほど悪い話ではないのです。その辺りを解説したいと思います。

なお、日米関税交渉はまだまだ確定していない部分がありますので、ひとつの可能性のお話とご理解ください。

航空機100台の使い道

まず、「関税」とは、ある国から物を買うときにかかる「輸入税」のようなものです。アメリカは、日本からの輸入品に対して最大25%の関税をかけるかもしれないと発表しました。そうなると、日本企業にとって大きな負担になってしまいます。

そこで、日本はアメリカと話し合い、日本側にさまざまな譲歩を引き出すことで、15%の関税引き下げに合意しました。その中ででてきた「ボーイング社の航空機100機を購入する」という話。どんなサイズ感の航空機かは分かりませんが、相当高額なのは間違いありません。

「そんなにたくさんの飛行機を日本がどう使うの?」と思う人もいるかもしれません。当然のことですよね。まだ乗れる飛行機を捨てて、新しい機体にするの?なんて心配している方もいるかもしれません。

でもご安心ください。
飛行機には、「航空機リース事業」というものがあるんです。

航空機リースとは?

航空機リースとは、飛行機を他の会社に「貸して、使用料(リース料)をもらう」ビジネスのことです。

たとえば、あなたが飛行機を購入し、LCC(格安航空会社)が「この飛行機を3年間使わせてほしい」とお願いしてきたら、飛行機を貸してリース料を毎月もらうということです。

実際、個人が飛行機会社に貸すことは考えにくいですが、イメージとしてはそんな感じです。

実は、世界の航空会社の半分以上が、自分たちで飛行機を購入せずにリースを活用しています。なぜなら、飛行機1台は数十億円以上もする高価なもので、全部自分で買うのは大変だからです。そこで、リース会社が代わりに飛行機を買い、それを必要な航空会社に貸すことで、ビジネスが成り立っているのです。

日本にもある、航空機リース会社

日本にもいくつかの飛行機リース業を行っている企業があります。

「三井住友ファイナンス&リース(SMBCアビエーション)」や「三菱HCキャピタル」など。これらの企業は、世界中の航空会社に飛行機を貸し出し、月ごとにリース料を受け取っています。

2024年8月には、航空機リース事業を主力のひとつにしているオリックス株式会社が、1500億円以上を投資して航空機事業を強化すると発表しました。中小型の中古機を中心に50機以上を購入し、保有する機体数を倍以上に増やすのだとか。これだけを見ても、航空機リース業のニーズが高いことがわかりますよね。

今回購入が決まったアメリカ製の飛行機100台も、これらのリース会社を通して貸し出されると思います。しかも、政府の融資枠がつくわけですから、かなりおいしいはずです。

融資先はたとえば、新興国のベトナムやインド、アフリカの航空会社などが考えられます。自前で飛行機をたくさん買うのが難しいため、リースで使うことが多い国々です。世界規模の話ですから、日本としては収益を得ながら国際協力にもつながるわけです。

リースビジネスの収支モデル

では、飛行機を貸すとどれくらい儲かるのでしょうか?

たとえば、1台5,000万ドル(約75億円)の飛行機を購入し、1ヶ月あたり30万ドル(約4,500万円)でリースするとします。

1年間で得られるリース料は、30万ドル × 12ヶ月 = 360万ドル(約5.4億円)
これを10年間続けると、3,600万ドル(約54億円)になります。

10年後たった飛行機は中古として売ることもできますし、そのままリースを続けることも可能です。中古で2,000万ドル(約30億円)で売れたとすれば、リース料+中古売却で合計5,600万ドル(約84億円前後)の収入になります。飛行機を75億円で購入したのですから、かなりの儲けですよね。

ちなみに、飛行機の耐用年数は、大型・中型の旅客機で約20〜25年、貨物機で25〜30年と言われていますので、かなりおいしいビジネスですよね。

国が主導するメリット

今回の「飛行機100機購入」は、ただモノを買って終わりではなく、「どうやってそのモノを将来に活かすか」を考えた政策でもあります。

  • アメリカへの輸入を増やすことで、関税を引き下げてもらう(政治的メリット)
  • 日本企業がリース収入を得られる(経済的メリット)
  • 成長国に飛行機を貸して信頼関係を築く(外交的メリット)

つまり、1回の買い物で終わらず、「買う→貸す→収益化→再利用→国際関係も良好に」という流れができるのです。

さらにトランプ大統領の期限もよくなると、なかなか考えられた作戦です。

まとめ

  • 航空機リースは、「飛行機を貸してリース料を得る」ビジネスです。
  • 1機あたり年間数億円のリース料が得られ、10年運用+中古販売で、数十億円の収益になります。
  • 日本がアメリカとの関税交渉で飛行機100機を購入したのは、リース事業として活用する前提があるからです。
  • この動きは、政治・経済・外交すべてにメリットをもたらす「戦略的な買い物」と言えます。